
違法建築物件となる5つの条件
「違法建築物件」とは読んで字のごとく、法律(条令)に違反している物件のことです。
日本の住宅は「建築基準法」や「都市計画法」という法律や、各自治体の「条例」に従って建てられています。
それらの法律や条例が施行される前に建てられた家や、一部増築がされている家などは、現在施行されている法律・条例の定めに違反している違法建築物件の可能性があり、主に5つのケースが考えられます。
1.建築確認申請に違反している
住宅を新築するときや10㎡を超えるような増改築をする場合は、基本的に確認検査機関もしくは特定行政庁に必要書類を添えて申請し、建築基準法や条例に適合しているか確認を受ける必要があります。
これを「建築確認申請」といいます。
建築確認申請は建築主の義務であるため、例えば10㎡以上の増築を行う場合に申請を怠ると法律違反になります。
それ以外にも、某大手アパート建設会社の問題のように、建築確認では延焼を防ぐための界壁を小屋裏まで設置するとしていながら、実際は界壁を設置していなかった場合などのように、建築確認申請と異なる建物を建築した場合も当然、法律違反となります。
2.建ぺい率、容積率をオーバーしている
まず、「建ぺい率」とは、敷地面積に対する「建築面積」の割合の制限です。
つまり、建物を上から見たときに、その土地の何割まで建物が占めてよいかという数値です。
例えば、50坪の土地で建ぺい率が60%の地域の場合、最大30坪(50坪×60%)の建築面積の建物を建てることができます。

続いて、「容積率」とは、敷地面積に対して、建物のすべての階層の床面積を足した「延べ床面積」の割合の制限です。
例えば、50坪の土地で容積率が200%の地域の場合、最大100坪(50坪×200%)の延べ床面積の建物(1階40坪、2階30坪、3階30坪のような)を建てることができます。

建ぺい率オーバー、容積率オーバーとは、建築確認申請を怠った増築などの理由により、その地域に定められたそれらの数値を超えて、建物が建てられていることをいいます。
上記の例えに当てはめると、建築面積が30坪を超えていれば建ぺい率オーバーとなり、延べ床面積が100坪を超えていれば容積率オーバーとなります。
3.外壁後退制限や高さ制限に抵触している
「外壁後退制限」とは、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域や田園住居地域において、建物の外壁と隣地境界線までの距離を、一定の数値離さなければならないという制限です。
地区計画や建築協定、風致地区などで後退距離を定めている場合もあります。
例えば外壁後退1.0mの制限がある地域で、建物と隣地境界線からの離れを測ってみると、80cmしかなかった場合は、外壁後退制限に抵触している違法建築物件となります。
また、建築基準法では用途地域によって建築物の高さが制限されていますが、例えば絶対高さ制限10mの地域内に10mを超える高さの建物を建てた場合は、当然、違法建築物件となります。
4.接道義務を満たしていない
建築基準法では、「建築物の敷地は(幅員4m以上の)道路に2m以上接しなければならない。」と定められています。
この接道条件を満たさない土地は、災害時などに消防車や救急車などの緊急車両が通行できず、特に火災時などは鎮火が遅れ周辺住居に燃え広がるおそれがあるなど、被害拡大につながる危険性があります。
そういう危険な建物を減らすために、法律で接道条件を満たさない土地への建築を認めないようにしているのです。
前面道路が建築基準法に定める道路ではない場合や、土地が道路に接する間口が2mを切る場合、その土地上に建っている建物は違法建築物件となる可能性があります。

5.農地転用許可申請をしていない
市街化調整区域の場合など、地目が田や畑などの農地となっていて、その土地上に住宅が建てられているケースが稀に見受けられます。
農地に建物を建てる場合は、事前に農業委員会へ「農地転用許可申請」(市街化区域の場合は届出)が必要です。農地転用の許可が下りて初めて建築が可能となります。
そして建物が完成したら農業委員会へ「現況証明願」を提出し、さらに法務局へ「地目変更登記」を申請する必要があります。
これらの手続きを行わず建物を建てた場合、原状回復義務により建物を取り壊し、農地に戻す命令を受ける可能性があるだけでなく、農地法の罰則や懲役が科せられる可能性もあります。
既存不適格物件
ただし、法令などに適合しない物件がすべて違法建築というわけではなく、違法建築物件と似たもので「既存不適格物件」があります。
既存不適格物件とは、建物の建築時には適法だったものの、その後の建築基準法やその他の法令、条例の改正を受けて不適法になってしまった建築物のことをいいます。
例えば、新築または増築時に、
建築確認申請が不要だったので、建築確認を受けていない
現在より建ぺい率、容積率の制限が緩かった
外壁後退制限や高さ制限がなかった、または制限が緩かった
建築基準法が施行される前から存在する道路に面していた
などの条件のものが既存不適格物件に該当します。
違法建築物件、既存不適格物件の4つのデメリット
1.強制的な是正命令が下される
建築基準法第9条には、違法建築物件に対する措置が明記されています。
建築中はもちろんのこと、完成済みの違法建築物件に対しても、特定行政庁は除去や移転、改築、修繕、使用禁止などの措置を命じることができるため、違法建築物件の所有者は直ちに建物を現行の法令や条例に適合させる必要があります。
ただし、既存不適格物件に対しては、建築当時は適法に建築されているため、大規模な増改築や修繕、用途変更を行う場合を除き、直ちに現行の法令や条例に適合させる必要はありません。
2.住宅ローンが利用できない
違法建築物件については、ほとんどの場合、購入時に住宅ローンを利用できません。
そのため購入可能な顧客層が限られてしまい、おそらく一般の顧客層は購入の検討が難しいでしょう。
ただし既存不適格物件については、場合によっては住宅ローンを利用できる可能性があります。
3.建て替えや増改築の条件が厳しくなる
違法建築物件や既存不適格物件を建て替える場合、法令に違反している部分については、現行の法令や条例に適合するよう建築する必要があるため、既存の建物よりも面積が小さくなる、高さが低くなるなどの可能性があります。
また、既存建物の違反部分を是正しない限り、増改築については許可が下りない可能性があります。
4.雨漏りやシロアリの被害を受けている可能性がある
違法建築物件や既存不適格物件は築年数が古い物件である場合も多く、その場合雨漏り被害※やシロアリの被害※を受けている可能性が高くなります。
雨漏りやシロアリの被害は「物理的瑕疵」に該当し、それらの被害があることを売主が買主に告知せず売却した場合、「契約不適合責任」を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求などを受ける場合があります。
※雨漏り被害のリスクについては、【「雨漏り被害がある物件」を売却する方法】の記事で説明しています。
※シロアリ被害のリスクについては【「シロアリ被害がある物件」を売却する方法】の記事で説明しています。
違法建築物件、既存不適格物件を売却する4つの方法
1.現行の法令や条例に適合させる
違法建築物件や既存不適格物件が違反している部分を是正し、現行の法令や条例に適合させれば、普通の不動産として売却可能です。
ただし、違反部分の是正をするためには建築物の修繕や一部解体など、相当の費用がかかることが予想されます。
2.違反建築物であることを気にしない買主を見つける
住宅ローンを利用しない現金購入の方で、かつ、違法建築物件に対して、除去や移転、改築、修繕、使用禁止などの是正命令があっても構わない、という方への売却は可能です。
ただし需要の少なさ故に、大幅な値下げが必要となるリスクや、そもそも買主が見つからないというリスクは覚悟しておくべきでしょう。
3.建物を解体して更地で売却する
違反している建物を解体してしまい、更地にして販売するということも、ひとつの方法です。
もちろん解体工事には相当の費用がかかりますが、違反の内容によっては、「現行法令に適合するよう是正するよりも、解体した方が費用が抑えられる」という可能性があります。
建物を解体してしまえば、契約不適合責任の対象となる建物が存在しないため、売主にとっても安心です。
ただし注意点として、土地についての契約不適合責任まで無くなるわけではありません。
また、再建築不可物件※の場合、既存の建物を解体してしまうと建て直しができなくなります。建物を解体する場合は、よく検討してから依頼することをオススメします。
※再建築不可物件については【「再建築不可物件」を売却する方法】の記事で説明しています。
4.不動産買取業者に売却する
一般のお客様の中から買い手を探すとなると、前述したように是正命令を受けるリスクがあり、住宅ローンも利用できないため、長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
不動産買取業者に物件を売却すれば短期間で売却できるうえに、現行の法令などに適合させるための手間と費用と時間をかける必要もなく、不動産のプロが買い取ることで売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
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